推理小説が与えてくれたこと

私が読書を好きになるきっかけとなった推理小説があります。その本は父から薦められたものでした。一度ページをめくると止めることが出来ないほどに面白かったため、ノンストップで読んだものです。その後この推理小説の作者が書いた長編作品を読み漁ったことを昨日のように覚えています。
さてこの作品には過去から逃げるために他人に成りすまして生活をする女性が登場します。その根底には借金や一家離散という、とても重く苦しいテーマがありました。過去の自分を捨てることで全てをリセット出来ると思いきや、犯した罪や過去から逃げることが出来ず、幸せを掴みたくても掴めないもどかしさは読者にも痛いほど伝わってきました。またお金に翻弄されることの恐ろしさも同時に感じたものです。
しかしながらスリリングなストーリー展開にとても興味が湧き、その後過去を消すために整形する女性達が登場する作品を時折読むようになりました。こうした作品に出会う度に「顔」とは一体何なのだろうと考えさせられます。顔を変えて別人として生きることで、本当に未来は変えられるのでしょうか。また美しい顔になったことで一時は得をしたと思えても、忍び寄る過去が邪魔をして心から幸福を感じることの出来ない登場人物達の姿からは、考えさせられることもたくさんあるものです。何はともあれ本を読む楽しさを知るきっかけとなった推理小説は私に生きる上での様々な課題を定義してくれたと感じています。これらを永遠のテーマとして時折考えながら地に足を着けて生活してゆきたいものです。

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