日頃から慣れ親しんで読んでいる小説を生み出す作家達について思いを巡らせてみました。そのきっかけとなったのは一冊のミステリー小説で、男と女の生き様や恋愛を描きながら物語が進んでゆきます。登場人物達は誰かを愛しつつも自らの気持ちに正直に生きようとしており、綺麗ごとでは片付けられない「人間の性」がとても興味深かったです。最も心に残ったのは物語のキーポイントとなる男性作家でした。彼にとって自らの恋愛や周囲の人間達は、なくてはならない題材なのです。自分が女性を愛しのめり込んでゆく過程も材料であり、書生と彼を取り巻く三角関係の恋愛もまた書くための題材なのです。この男性の生き方は冷静というより冷淡であり、ニヒルにも見えます。しかしながらそこまでして己が満足するものを世に残したいとする願望は、カッコよく魅力的に感じました。書生曰く「机の上だけで完結させない本物の作家」だそうです。しかしながらこの作家を取り巻く者達は、破滅への道を歩んでいるのも事実であり、切なく残酷だと感じました。私の生活の一部ともなっている小説の陰にも、すさまじい人間模様の果てに書かれた物語があるのかもしれないと思うと、非常に感慨深いものがあります。そんな背景にあることを考えると、読み手である私も全力で受け止めようと感じずにはいられません。
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