出版社でのアルバイト

以前、出版社でアルバイトをしたことがあります。その出版社が扱っていたのは、主に学術書や専門書といった、少しお堅い感じの書籍。ですから著者は大学教授やその道の権威と言われる先生方ばかり。そこで編集アシスタントとして、コピー取りや電話番をやっていました。それでも、筆者や企画者の出版意図を身近に感じながら仕事ができたことは、大変良い経験になったと思っています。
深くそれを感じたのは、トラウマに関する本を出版した時でした。簡単な誤字脱字程度の校正を頼まれ、とりあえず原稿を読むことに。実際のカウンセリング例があり、どうやって治療していくのかという内容でしたが、専門用語が多く、当然私には理解不能。しかし、先生の苦悩が盛り込まれている構成だったので、分からないながらも引き込まれていきました。校正が終わり、「患者さんへの労わりの気持ちが伝わりました」と、企画者に感想を述べると、「それが伝わったのなら、この本は成功」と嬉しそうにされていました。つまり、この本のターゲットは同業者やそれを目指す人達ではあるけれども、テクニカルなことに走るのではなく、思いやりの気持ちが必要であることを伝えたかったそうです。フィクション作家なら、豊かな感情表現ができるかもしれませんが、それが専門ではない著者は難しいわけです。そこまで考えて出版されていることにいたく感動致しました。

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