道尾秀介著の「N」というミステリー小説を読みました。
この作品は6章の短編からなるオムニバス形式の小説で、なんと珍しいことに「どの章からどの順番で読んでもいい」というかなり新しいスタイルになっています。
読んだ順番によってこの物語の印象が変わるようになっており、その数は6×5×4×3×2=720通り。
本の最初に、各章の冒頭部分だけが読むことが出来るようになっており、それを読んでから気になる章を読むこともできますし、タイトルだけを見た直感だけで順番を決めていくこともできます。
冒頭の文章だけ読むと主人公はバラバラのように見えますが、「読んだ順番によって印象が変わる」と言われている以上どこかでこの物語が繋がっていることは分かるので、これがどうやって繋がっていくのかと、各冒頭を読んだだけでワクワクしたものです。
これ以上のことを話すと何がネタバレになってしまうか分からないので話すことが憚られますが、ミステリーに苦手意識を持っている人でも肩肘張らずに気楽に読むことが出来る小説になっています。
私もミステリー好きの知り合いからお勧めされて読んでみたのですが、読了したときの心情を今も引きずっています(笑)
ただこれは「あの順番」で読んだからかもしれませんし、「どの順番」で読んだとしても抱くものかもしれません。
これはきっと、実際に手に取って、順番を選択して、読んでみて、初めて知ることが出来る感情なのであろうと思います。