大きな果物を誰かと食べる幸せ

女友達が語ってくれた初めて一人暮らしをした時の話です。今からかれこれ5年位前の30歳を過ぎた蒸し暑い7月の週末に古いアパートに引っ越しをしたそうです。両親と弟、そして友達が手伝いをしてくれて人生で初めての引っ越しが終わり、みんなでお昼ご飯の準備をしていた時、父親が大きなメロンを買ってきたそうです。それはささやかな引っ越し祝いでした。まだまだ熟しておらず固かったため、柔らかくなるまで置くことにしたそうです。それから数日経った日のおやつに大きなメロンを切ることにしました。メロンが大好物なため一人占めできることにささやかな幸福を感じたそうですが、口に運んでいるうちに切なくなり涙がこぼれてしまったとのことです。それは家族で囲んだ食卓を思い出し、とても寂しくなったからだと話してくれました。
さて夏と言えばもう一つなくてはならない果物にすいかがあります。私のお気に入りの小説には、大きくてずっしり重いすいかが登場します。この作品は30歳を過ぎた女性が母と暮らす家を出て、女性だけが住む食事付きの寮のようなところで暮らす物語です。熱い夏の日にそこで暮らす女性達がみんなで黙々とすいかを食べている場面は、和やかでとても温かい気持ちになったものです。生きていると孤独を感じることや不安になることもたくさんあるけれど、誰かと大きなすいかを一緒に食べることができたら何とか生きてゆけそうな気がします。こうしたエピソードが頭に浮かぶ時、人と過ごす幸せを思うこともしばしばです。

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